デザイナー | DESIGNER
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文田 昭仁 | AKIHITO FUMITA

文田昭仁のデザイン哲学は、日本人としてのアイデンティティーを強く意識しながら、自身のデザインに直接的な日本の表現を用いない手法に現われている。建築的アプローチから生まれる、大胆で前衛的なデザイン。彼の手がける空間やプロダクトは、「機械」や「未来」といったモチーフを彷彿とさせる国籍不詳のデザインでありながら、日本の寺などで感じるような一種独特な緊張感や静寂を漂わせる。

グローバルな仕事をしていく上で、日本のデザイナーとしてどう表現していくか。

彼の長年の命題であったが、試行錯誤の末に導き出された今の文田のデザインには誰の目にもわかる「直接的な日本の形」とは性質の異なる、「遺伝子レベル」で伝わる日本人としての表現が確かに存在する。画一的な日本の表現や、手垢のついた手段にあえて頼らないそのスタンスの根底には、彼の考える「日本人デザイナー」としての哲学の源流がある。
文田のデザインは、「グローバルデザインの本質とは何か」という問いを静かに私たちに投げかけているように思わせる。
タイム アンド スタイルとのコラボレーションにより生まれたLOCUSシリーズは、意味から脱却するという文田独特のデザインプロセスから始まっている。

人は言葉によって物事の意味を理解する。例えば空間における「床・壁・天井」という言葉。通常、人は一般的な部屋を想像するとき、壁は床から垂直に立ち上がり床と天井は壁と垂直にあるものと認識するが、彼の思考の中で、その相互関係は必ずしも絶対ではない。「床・壁・天井」を本来の意味から外すことで、どういう空間表現に落とし込めるかを考える。彼の「床・壁・天井」はゆがんだり、ねじれたり、時には一つの面でつながって球体に近づく。いったん意味を外され抽象化されたイメージは、彼によってつくり出された新たな意味やルールが付与され、実際に手で触れられるものとして形づくられる。

「球体の一部を切り取った形状」のスケッチから生まれたLOCUSシリーズもまた同じプロセスをたどってできたプロダクトである。LOCUSのデザインのはじまりは瞬間的だったと彼は振り返るが、背・座・脚など椅子の持つ基本的な要素を、いったん本来の意味から外してとらえなおす作業は「球体」というモチーフに繋がる。「球体の一部を切り取った形状」とは、単に形としての表出だけでなく意識下で瞬間的に発現する彼のデザインプロセスそのものである。

プロダクト - LOCUS EASY

PROJECT - 日産グローバルギャラリー本社