サービス | SERVICE
ニュース | NEWS

2015.10.6

島根の伝統 石見焼(いわみやき)

江戸時代より水がめやすり鉢、貯蔵用の壺などの日用の器を作り続けている、島根県江津市に伝わる石見焼。
石見焼の優れた耐水性、堅牢性、巧みなろくろ技術を活かしたプロダクトが完成しました。
常備菜の保存用や温かい料理の提供に役立つ蓋付鉢と陶器製のスツール、サイドテーブルを発表いたします。

会期 : 2015年10月24日(土)~11月15日(日)
場所 : TIME & STYLE MIDTOWN

伝統工芸士 嶋田孝之氏によるろくろ実演をご覧いただけます。
お誘い合わせの上、お気軽にお越しください。

10/24(土)14:00~、16:00~
10/25(日)14:00~、16:00

※入場無料

TIME & STYLE MIDTOWN (六本木)
東京都港区赤坂9-7-4東京ミッドタウン ガレリア 3F
PHONE:03-5413-3501 OPEN : 11:00-21:00

≪stoneware sculpture≫

以前は大きなかめを作っていたように、石見焼は大物を得意とする数少ないやきものの産地である。
木材、スチール、アルミ、ガラスなど、家具を構成する素材はいくつかあるが、石見焼との出会いによって、
耐水性に優れ、堅牢度の高い石見の土が家具にも適していると確信し、やきものによる家具の可能性を追求した。同時に、大がめとまではいかないまでも、大物を得意とする職人の手によって、身近な製品をもう一度
生み出してもらいたいと思った。
リビングや寝室でのスツールとして、ソファの傍らのサイドテーブルとして、または商業施設の
共有スペースなどの室内での使用はもちろん、庭やテラス、バルコニーのような外部空間においても安心して
使用することができ、風雨によって変化する表面は時間の流れを刻み、静かに存在を増していくことだろう。

焼成するまで分からない釉薬の色の濃淡や表面に表れるやきもの特有の「景色」、土肌の質感、
土の収縮による僅かなゆらぎは、一つひとつに個性と固有の性格を持っているかのように存在し、
空間の中に新たな違和感を放ち、空間の寛容さを試しているようでもある。

≪石見焼の歴史≫

台所の使い勝手のいい場所に保管されていた味噌や塩の壺や家庭の味が詰まった漬物のかめ。
時代と共に、その存在は見慣れなくなったが、小さな頃に親しんだ、懐かしい記憶は誰の中にもある。

石見焼は江戸時代より、島根県江津市を中心とした石見地方で焼かれているやきもので、水がめやすり鉢、貯蔵用の壺などの日用の器を作り続けている。緑豊かな自然に囲まれたこの地方には緻密で硬質な陶土にも恵まれ、堅牢で耐 酸・耐塩・耐水性が高い土であることから、漬物かめなどの貯蔵用の容器としても全国に名が知られることとなった。「はんどう」と呼ばれる大きな丸いかめは石見焼の代表である。

時代は変わり、上下水道が整備されると水がめは必要ではなくなり、小さな壺は、電子レンジの使用や冷凍が可能な、便利なプラスティック製の密閉容器へと代わり、昔ながらの石見焼は少しずつ姿を消していった。

そんな時代背景の中でも、人々の生活とともに美しく、誠実に育ってきた器を、伝統の技術と強いこだわりを持つ作り手によって、石見の土地で、変わらぬ製法によって、日常を支える堅牢な器を今も生み出している人たちがいる。

≪石見焼の特徴≫

登り窯

山の斜面を利用し、細長い部屋を数室連続させ、次々に室内の容積を大きくし余熱を利用しながら
焚き上げていく形状の窯。この室の中に器を積み込み、たき口から入れた炎で直接焼成していく。
隣り合う室は小さな小窓で繋がっており、小窓から次の窯へ温度が伝わりながら焼成する仕組みは、
熱効率がよく高温が出せるために、大物作りには欠かせない。一度、登り窯に火が入れられると、
5分おきに薪をくべ炎を調節し、1200~1300度という高温で丸2日間掛けて焼き上げる。
電気窯やガス窯と比べ、登り窯は手間と時間が掛かり、燃料である松の割れ木を大量に使うため、
決して効率の良い窯ではないが、石見焼独特の色や焼きムラを生み、窯出しをするまで、
仕上がりが分からないこの焼成法は、やきものの面白さと怖さを併せ持っている。
今では江津市内で登り窯を使っているのは1軒のみとなった。

しの作り

水がめ等の大型陶器等で使われている、石見焼特有の伝統技法。
粘土をひも状に伸ばし、円を描きながら積み上げていく技法で、かなりの腕力を必要とする。
ろくろによる成形は、迷うことなく、一気に形を作り上げなければいい器はできない。
形を整えようと手を加え過ぎると、土が弱くなってしまい、強い器にはならないからだ。

≪石見蓋付鉢≫

欧米ではあまり馴染のない蓋付きの器だが、
日本料理には「蓋物」と言われる器がよく並ぶ。
汁椀、煮物椀、茶碗蒸しの蒸し碗は温かい料理を
温かいまま提供する心遣いの表れであり、
ハレの日の重箱は、姿勢を正す品格を持ちながらも、
蓋を開けるその瞬間の愉しみや期待感がより一層
料理を引き立てる。

石見蓋付鉢は、蓋物の魅力はそのままに、
旬の野菜で作る漬物やそれぞれの家庭の定番の常備菜を
作り置きする器として、または器の中で一晩寝かせ、
うまみが増した料理をそのまま食卓に並べられる
器として、料理を目と舌で愉しみ、美味しくいただく
ための器である。

ろくろを挽く指先の僅かな変化で作り出す形状は
決して飾らず、柔和で懐かしい空気を纏う。
柔らかな胴のふくらみは手の中でしっとりと納まり、
土肌が持つ親しみやすさは和食にとどまらず、
洋食にも気軽に使える懐の深さを併せ持つ。

美しい貫入が表れる枯草色の透明釉、ふっくらととろみのある白色の藁灰釉、
日本人にとって馴染み深い藍色を持つ呉須、限りなく黒に近い深淵な黒飴釉。
この自然な色合いは、時の経過と共に日本の食卓をいつまでも優しく包む。
家族で囲みたい料理には口の広い大きなサイズを、食べきれる量を手軽に作っておきたい時は小さなサイズを。料理や家族構成に合わせて、色やサイズを選べる。

≪石州 嶋田窯≫

80年の歴史を持つ嶋田窯。
最盛期の石見地方には100軒もあったと言われる窯元も、時代の変遷と共に減少し、
現在では7件のみとなった。その中でも、石見焼本来の味わいを表現できる登り窯による 製法に
こだわり続けている唯一の窯元が嶋田窯である。

装飾を目的として作られた、人の背丈をも超える大きな壺は、今では市場に出回ることはなくなったが、
大物づくりの名人と呼ばれた先代の手によるもので、石見焼の歴史と異彩を放つ高度な技術を
工房の片隅で静かに証言している。

今回発表に至った製品は、慎み深く伝統を守り続けている3代目嶋田孝之氏のものづくりへのこだわりと自負、そして新しいものへのしなやかな姿勢に支えられて作り出すことができた。人懐こい島根弁で語りながら、
自在にろくろを操る姿は何よりも純粋であった。

写真 : 嶋田窯 3代目 嶋田孝之氏