My smallest architecture
Hiroshi Nakumura & NAP
2021年6月11日(金)~6月25日(金)
*中村拓志氏によるプレゼンテーション 6月11日(金)18:00~ (ご予約は不要です)
丸太柱の根本を斜めに面とりした部分を、茶人たちは古くから「タケノコ」と呼んできました。これは床を貫くものとして忌み嫌われる家屋内の筍の子を、 あばら屋の風情として愛するような、侘び寂びの感性の現れです。私が建築に丸太を用いるのも、素材の美しさはもとより、自然に合わせて暮らす日本人の自然主義的美学が空間に立ち上がるからです。そのような慎ましい場に相応しい椅子を作ることが私の願いでした。
タイムアンドスタイルは、丸太の製材・乾燥から行い、木と丁寧に向き合うものづくりの中で、日本人特有の美学や精神性を大切にしてきたブランドです。私はその姿勢に共感し、ダイニングチェアとラウンジチェアの製作を依頼しました。
最初に構想したのは、椿の皮付き丸太を日本の木造軸組建築のように水平垂直に構成した、小さな空間性を持つ椅子です。座り心地や使い勝手を追求し、正面に回りこむときにつま先があたる後脚や、座ったときに踵が当たりやすい前脚を斜めにカットすると、「タケノコ」が現れました。また、アームをテーブルに掛けて椅子を浮かせることで、テーブル下の掃除がしやすいことにも拘りました。禅寺の修行の一つに掃除があるように、場を美しく清めることは、私たちがどう生きるかという哲学的で宗教的な実践なのです。 このプロダクトはそのコンセプトモデルを元に、沢山の方が求めやすいように、製材された無垢の丸棒を使って制作されたものです。
「場を掃き清め、自然に合わせて暮らすこと。」そのような慎ましい生活のための椅子が誕生しました。
(中村拓志)
中村 拓志
1974年東京生まれ。鎌倉と金沢で少年時代を過ごす。1999年明治大学大学院で建築学修士を修めた後、隈研吾建築都市設計事務所を経て2002年NAP建築設計事務所を設立。現在はNAPコンサルタント、NAP International、NAPデザインワークスの代表も務め、街づくりから家具まで、扱う領域は幅広い。
自然現象や人々のふるまい、心の動きに寄りそう「微視的設計」による、「建築・自然・身体」の有機的関係の構築をモットーとしている。そしてそれらが地域の歴史や文化、産業、素材等に基づいた「そこにしかない建築」と協奏することを目指している。近年はそのエッセンスを日本の伝統的な建築や庭園文化の中に発見し、それらの再構築にも取り組んでいる。
東京都港区南青山4-27-15
Access:東京メトロ 表参道駅 A4/A5出口 徒歩7分
Tel 03-5464-3205
営業時間 11:00 – 19:00 (水曜定休)