2021年7月9日(金)-8月29日(日)
Time & Style Midtown
小瀬村真美氏を迎え、展覧会 ART IN TIME & STYLE MIDTOWN vol.20「絵と生活」を開催致します。
小瀬村氏の作品は「インスタレーション」「映像」「写真」という表現媒体を用いながら、それらの表現は一貫して「絵画」に紐付いています。額縁に切り取られた人物や静物の西洋の古典絵画表現や、設えに沿って表現されてきた日本の絵画表現の、見る側に刷り込まれている模範となるような絵画の型に、ごく自然にそしてとても巧妙に作家の手が加えられた動画作品。ある古典絵画を彷彿とさせるよう、堅実にモチーフと向き合って手作業で丁寧に撮影された美しい写真の静物画作品。博物館の図鑑の一頁を抜き出したような、美しい画像と描きの界に目を疑いたくなるような映像や写真の作品。それぞれの表現はどれもとても丁寧で、それぞれの一手一手の作業の背景に裏付けや作家の遊び心があり、その制作の過程もより絵画的であると感じられます。
本展は昨夏の会期が延期となり、それが昨年の冬に、それがまた延期となり、2年越しで今年のこの梅雨明けの夏の時期での開催となりました。2度の延期の中で、その開催の季節と展示される作品の季節が、同じ季節となり、観る側に矛盾がないことを優先し、柔軟に展覧会が構成されてゆきました。本展の会場となるインテリアショップでもあるTime & Styleも、季節ごとに家具や小物や盆栽が配置され、その時の季節が感じられる住空間を彷彿とさせる店舗空間です。小瀬村氏の柔軟な会場作りと、人や日常の気配のある店舗とのやりとりも本展「絵と生活」の見所となっています。是非、この空間に身を置いてご高覧ください。(企画:バナナアート)
私は既存の絵画の演出方法や構造を引用し、カメラを使用した絵画の模写とも言えるような写真作品、映像作品を制作しています。展示される全ての作品は一見絵画のように見えますが、実際には全て実物を撮影しながら制作されています。今回の展示のテーマは「絵と生活」です。展示会場であるTime & Styleのインテリアショップという特性を活かし、生活の中にある「絵」、つまり額に入った油彩画のようないわゆる1点で完結する「絵画」ではなく、私たちの生活の中にある様々な形態の「絵」、生活により密接した「絵」を基にした作品を、店内の家具や盆栽などのディスプレイと共に展示します。
例えば研究目的で描かれた植物画や図鑑、メモのような役割の写生画や習作として身の回りのテーブルウェアを描いた静物画、そして室内空間の一部として描かれた日本の伝統的な障壁画や掛軸など、生活と共にあった「絵」、「絵画」の周辺にあった「絵」を基にした作品をご紹介いたします。それらの「絵」はカメラ同様に記録の役目を果たしていたり、または自然を観察する観察眼であったり、日用品を眺める画家の視線であったりと、昔の生活様式や人々の物の見方が反映された鏡のような役割を果たしていると言えます。その描かれ方やモチーフの扱われ方は現代の私たちには興味深い一方で、奇妙に感じたり、疑問に思うこともあります。忘れられているような古い絵画を通して見えてくる、私たちの視点とのズレやギャップは、絵画で描かれているものを実際に現実の空間に再現してみる事で、より可視化され、露わになってゆきます。絵画から現実に起こされてズレとともに絵画へと戻された、こうしたプロセスを経た作品と向き合う時に起こる、ちょっとした迷いや違和感のようなものを通して、見る人それぞれが物の見方に普段よりも少し繊細になっていただけたらと思っています。また今回は、ディスプレイとしての特殊な生活空間と作品の調和を楽しんでいただければと思います。(小瀬村真美)
小瀬村 真美 / Mami Kosemura
東京藝術大学大学院美術研究科後期博士課程(油画)修了。写真の加工や絵画の構図などを巧みに利用した映像インスタレーションや写真作品を手がけ、国内外の美術展、映画祭で発表を続けている。2015年に五島記念文化賞を受賞し、2016-17年にニューヨークにて海外研修。2018年には原美術館(東京・品川)にて個展を行なっている。
主な個展
2011 「闇に鳥、灰白の影」Yuka Sasahara Gallery (東京)
2015 「Still ~まだ、なお、今でも、依然として、今後も」AI KOWADA GALLERY (東京)
2016 「Pendulum」Dillon + Lee, NY (アメリカ)
2018 「幻画~ 像の表皮」原美術館 (東京)
主な展示上映等
2004「MOTアニュアル2004 -私はどこからきたのか/そしてどこへいくのか-」東京都現代美術館2006「Projected Realities」Asia Society and Museum, NY (アメリカ)
2006「日本×画展」横浜美術館
2007 「East of Eden: Gardens in Asian Art」Freer Gallery of Art and Arthur M. Sackler Gallery (アメリカ)
2008 「アジアとヨーロッパの肖像」国立国際美術館・神奈川県立近代美術館・福岡アジア美術館他
2009「INTERNATIONAL INCHEON WOMEN ARTISTS’ BIENNALE 」(韓国)
2009 「第一回恵比寿映像祭:オルタナティヴ・ヴィジョンズ」東京都写真美術館
2013「イメージフォーラムフェスティバル」最終審査員。
2013「再/生─ 映像が呼び覚ます第六感覚」水戸芸術館、茨城
2013「Now Japan」Kunsthal KAdE (オランダ)
2014「Kuandu Biennale 2014」 Kuandu Museum of Fine Arts (台湾)
2016「Past Forward」Carnegie Hall, New York (アメリカ)
主な受賞歴
1996 東京藝術大学 久米桂一郎奨学金
2001 東京藝術大学 高橋芸友会賞
2002 森美術館 ヤングヴィデオアーティストイニシアティブ賞
2005 野村財団 野村美術賞
2015 東急財団 五島記念文化賞美術新人賞
主な作品収蔵
Asia Society and Museum, NY(アメリカ)
東京都現代美術館
東京藝術大学大学美術館
群馬県立館林美術館
Kuandu Museum of Fine Arts (台湾)
東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガレリア 3F
11 am – 8 pm (無休)
Tel 03-5413-3501