行燈とは1600年頃(江戸時代)から日本人の生活の中で多く使われていた灯具で、日本の伝統的な灯りの一つです。木のフレームに和紙を張り、蝋燭や油を原料とした行燈は、和紙を通して詩的な陰翳を生みます。また、部屋から部屋へ持ち運ぶことができるのも特徴です。
現代では、夜も明るく照らされている日本ですが、その昔は1日の時間の移り変わりに身を任せ、昼は日の光を室内に取り込み、夜は手元を照らすだけの静かな灯りと共に暮らしていました。そんな日本人の美意識や自然観を現した照明である行燈を現代の生活に取り入れることを目指したのがNagoyaです。
Nagoyaは、多くの歴史書や古道具の資料から精選した、江戸時代中期以降に用いられた角行燈の一種である「名古屋行燈」を手本にしました。骨格となるフレームの素材に選んだ秋田杉は、日本の寒冷地である東北地方の厳しい環境の中、時間を掛けてじっくりと成長するからこそ年輪の密度が高く、繊細な木目を持っています。真っ直ぐに伸びる秋田杉は、割れや反り伸縮などの変化が少なく、加工性が高いこともあり、行燈づくりには適した材です。
また、Nagoyaには、樹齢100年を越えた、上質な秋田杉を使用しています。1台を製作するための木材は可能な限り共木を使用することで木目や色の統一感を生み、美しい佇まいになります。木工照明を専門とする指物師が、金物を一切使わず、精巧な仕口や継ぎ手の加工のみによってフレームを組み上げ、和紙を張り、一つひとつ丁寧に製作しています。
希少で美しい秋田杉と美濃の手漉き和紙で作られたNagoyaは、日本の伝統的な照明の中で最上級の組み合わせと言えます。現代の効率優先のものづくりとは逆行した手間と時間を掛けたものづくりだからこそ、大量に生産されるものとは比べられない価値を生み出しています。