2008年、自社工場 Time & Style Factoryを北海道上川郡東川町に設立。約30名の職人が受注品を一つひとつ丁寧な手仕事で仕上げています。日本で唯一、道産材の丸太を自社で仕入れ・製材・乾燥まで手掛けています。違法伐採ではなく管理された木材としてトレーサビリティに基づいたインテリアプロダクトを製造しています。
丸太は、日本の北緯43度~45度に位置する、広葉樹と針葉樹が共生する「針広混合林」の北海道・東北の森林から独自の方法で仕入れています。自治体が管理する市町村林、大学の研究林または民有林のオーナーから直接仕入ることで、安定したコストと品質を保っています。
生産者の顔が見えることで、供給された材料の品質のフィードバックや用途、さらにはその現場への植林や森林経営に関しても長期に渡り関与し続けます。これまでに58,842本の植樹を実施。(旭川家具工業組合と共に。)
調達した丸太は樹齢80年~200年ほどのナラ・タモ・カバ・サクラ・ニレ・セン(広葉樹)、トドマツ・蝦夷松(針葉樹)などの木理の表情が豊かな樹種です。これらは一般市場で取引されない曲がった丸太や、二股に分かれて枝節の多い丸太で、通常はバイオマス燃料用やパルプ向けのチップとなり、ライフサイクルが短命な木材です。
私たちはこのような国産丸太を積極的に購入して、100年先まで使い続けられるものづくりを目指しています。
入荷した丸太は、当社スタッフが年輪を数え、約1年半の天然乾燥を行います。乾燥後は、産出場所・樹齢・サイズなどを明確にした当社独自のトレーサビリティ評価を行います。一本の丸太からどれだけのプロダクトを生産することができたか?森やものづくりに携わる人々へ還元できる製品になっているか?ロスの少ない工程や作り方で、環境への配慮がなされているか?CO2の排出量の試算ができているか?など、樹齢の測定をすることによって従来の根本的なものづくりメソッドに変革を起こします。
木は乾燥させなければ使用することができません。一般的に、天然乾燥(屋外の自然環境下で約2年間)を行い、その後人工強制乾燥(人為的にコントロールされた80℃前後の温度)を経て、家具や建築に適した材料となります。
当社は2018年より40℃の低温バイオマス乾燥機による人工乾燥を独自に採用しています。高温で、迅速に、効率のよい人工強制乾燥の考え方を改め、「低温で、じっくりと、熟成させる」という原始的な工法に立ち返った方法をスタートさせました。
効率化が重視される現代において、時間軸で考察する理由の一つには、世界最古の木造建築である法隆寺の存在です。1400年経った柱や構造体はいまだに緻密で、硬質、粘り、曲げ、収縮の面からみても、最善の乾燥方法だと実証されています。
私たちは歴史から学び、これからのものづくりを昇華させる必要があると考えます。
私たちは、日本の伝統工法である手加工技術とその道具を有する、世界でも稀な工場を目指しています。家具やインテリア空間の製造に必要な日本古来の技能・技術を習得するため、2020年より社内に木工技術研究所を設立し、全職人の国家試験・技能検定の資格取得を推進しています。
また、世界レベルの育成を目指し、家具・インテリア業界をリードする本質的な「ものづくりリーダー」を創造します。
私たちのスタッフは、技能五輪・家具職種において金賞を受賞(2014年、2019年)し、2022年の技能五輪国際大会に日本代表として出場しました。
私たちは、若年層の技能者育成と技術継承の活動にも力を入れています。
プロダクトの最終仕上げ方法として、サスティナブルで、自然由来なナチュラル・オーガニックの仕上げ方法にこだわってきました。それは、現在の環境問題に便乗して出回っている品々の多くがグリーンウォッシュ的であることや人体や環境ホルモンの影響についても探究してきました。私たちが製作するプロダクトが、環境や動物・人体に悪影響を与えることがないように細心の注意と研究を続けます。
私たちは、持続可能な開発と永く愛用いただくために、厳しい自社基準に基づいた耐久試験と繰り返し強度試験を行なっています。これにより、永久的に使い続けられる強度と安全性を担保し、デザインと機能美、そして耐久と堅牢を加えた三位一体の道具を生み出すことを企業理念としています。例えば、チェアの耐久試験では、座面に950ニュートン(96.9kg)、背面に330ニュートン(33.7kg)の圧力を10万回かけ続けます。この試験に合格することが、本質的なサスティナブル社会への貢献であり、持続可能なものづくりの根源的なサイクルに必要な考え方だと思っています。
これまでの経済活動は、自然界から資源やエネルギーを取り出し、製品を作り、使い終わった製品は廃棄するという大量生産、大量消費が大半を占めています。これにより、地球温暖化や廃棄物処理の問題、さらには資源の枯渇や争奪が起こり世界はグローバルサウスという格差現象が起こっています。
そのために、製品開発に3つの条件を科しました。
1. 修理ができる構造であること。
2. 可能な限り手軽で、自分自身でメンテナンスできる製品であること。
3. 全ての製品に生分解性の素材を使い、土に還る素材の選択をすること。
ウレタン塗装仕上げには、無機系抗菌ウイルス剤を塗布し、衛生な製品を製作しています。
製品の製造過程で排出された木屑は、ブリケットマシーンという圧縮機でΦ100mm、t50mmの固形燃料に生まれ変わります。マイナス20度になる冬の北海道で、ブリケット燃料を薪ストーブに投入して、木材の最後の命と共に暖かい室内を享受します。また、2030年までに化石燃料の消費をゼロにして、工場を再生エネルギーで運転できるようにします。「作り手と愛用者は、宇宙船地球号の同乗者である」ということを意識しています。
写真の町として知られている北海道・東川町では、4月14日を「椅子の日」と制定しました。同町は、町の人口の4割の世帯が木材製造や家具・木工に携わり、旭川家具の約3割を生産しているという実績を持ちます。さらには織田憲嗣氏による織田コレクションをメインに日本初となるデザインミュージアムを設立し、「写真のまち・家具のまち・東川」を目指しています。その町で私たちは、東川小学校の児童のための椅子とデスクを製作し、地域に根ざした企業であり続けています。また、中川町や北海道大学とも提携して、北海道各地で生育されている良質な広葉樹や針葉樹を通して、地方での新たな働き方やワーケーション、アウトドアスタイルなど、移住や地方創生に向けた当社のノウハウを自治体と共有します。
隈研吾氏をはじめ、藤本壮介氏、田根剛氏など、世界で活躍する建築家やインテリアデザイナーのプロダクト開発やホテルや住空間を体現するため、工場内にモックアップルームを設置しました。CGやVRでは表現できない、素材の手触りや座り心地の感触、空間に広がる自然光の陰影などをリアル空間で体感していただきます。
国際的な認証制度であるFSC(森林管理協議会)と国内の森林を対象にしたSGEC(緑の循環認証会議)があります。Time & Style Factoryでは、国内の認証材を海外に輸出するために、独自に考えた国内ルールのほかに、国内外で安心して製品を購入いただけるよう、2023年までに工場の取得認証の獲得を目指します。
Time & Style Factory
北海道上川郡東川町北町4丁目13番2号