日本の伝統的なあかりはその特有の文化や歴史、生活習慣を表現しており、人々の精神性と結びついた日本の生活文化の貴重な資産と言えます。灯火器は地位の高い人だけが使用する道具でしたが、江戸時代になると広く庶民の間にも浸透してゆきました。電気が普及する以前に日本で使われてきた灯火器のひとつが行燈です。行燈は、屋外に持ち出しても風で火が消えることがないよう、木や金属で作られた枠に和紙を貼り込んだ火袋と呼ばれる囲いを取り付けた灯火器です。京都では丸く柔らかい形のものが多く、江戸では四角い形のものや光量を調整できる有明行燈、名古屋では木台の上に鉄の四角い火袋を乗せた名古屋行燈など、時代や地域により、様々な形の行燈が作られました。現代では一般家庭で見かけることはほとんどなくなり、旅館や料亭といった純和風の室内で白熱球やLEDを光源とした行燈が使われています。日本旅館の土間には露地行燈が置かれ、仄かな赤色を帯びた柔らかなあかりが客人を迎え入れてくれます。また、枕元に置かれた行燈や天井から下がる丸い雪洞形のペンダント照明が、室内に情緒的な雰囲気を演出しています。
日本の指物師の歴史は平安時代の貴族文化に起源を持ちます。京指物や奈良時代に遣唐使によって伝えられた唐木指物は安土桃山時代に茶の湯文化や書院造の隆盛とともに発展し、長崎や大阪へと広がってゆきました。江戸では徳川幕府が全国の職人を呼び寄せて江戸指物が興されました。指物師は家具や建具、階段、家庭内で使用する道具類などの細かな木工加工を担う職人です。木材と木材を接合するための仕口を加工して美しく強度の高い品物を作る仕事であり、こうした指物師や建具師たちの繊細な技術なくして日本の木工文化の躍進はありませんでした。
Bombori は秋田杉の無垢材の木枠に美濃の手漉き和紙を貼り込んでおり、電気部品以外は全て往時と同等の本質的な素材が使用されています。伝統的な照明の正統な佇まいを備えながら、モダンな空間の中にも違和感なく存在することができるように無駄な装飾を省き、素材が持つ存在感を大切にしました。機械生産では決して成しえない、手仕事の繊細さと作り手の情熱が凝縮した照明です。