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岐阜県中津川で木曽檜だけ製材している製材所を訪れた時に、木曽檜の木目の肌理の緻密さや美しさ、その繊細な表情を見て、木曽檜の家具を作りたいと思いました。日本独自の折り畳み椅子である胡床にお盆を乗せたサイドテーブルです。
長野県と岐阜県にまたがる木曽谷に育つ天然檜だけが木曽檜と呼ばれます。傾斜が険しい木曽の山は、雨が多く冬は雪に覆われる厳しい自然環境にあります。そのため木曽檜は他の場所で育つ檜の約3倍以上の時間をかけてゆっくりと育ちます。樹齢は300年を超え、その時間と厳しい生育環境が、緻密で美しい木目や優れた耐久性を生み出しています。伊勢神宮式年遷宮の御用材をはじめ、我が国を代表する文化財的な建造物への木材供給が古くから行われてきた特別な檜です。小さいパーツであれは、この貴重な木曽檜を有効に無駄なく使えると考えました。
簡易の移動式折り畳み椅子である胡床は、古墳時代に中国大陸から伝わったと言われています。平安時代には主に貴族が使っていましたが、その後神事でも使われてきました。椅子の文化が入ってきた明治時代以降では、日本舞踊や歌舞伎、能楽において演者や観客に使われたり、神社や結婚式場などでも使われてきました。長い時間をかけて日本独自の進化を遂げた、素材や構造と作り方が合理的なプロダクトです。
座面には植物性タンニンなめしのヌメ皮とキャンバスの生地を採用し、お盆の仕上げは木曽檜そのものの美しさを活かした無塗装の木地仕上と、漆の下に木目が透けて見える岐阜の伝統的な春慶塗を揃えました。
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