夜、日本の古い街並みを歩いてみると、店の軒下には提灯の暖かなあかりが灯り、辺りに古き良き日本の情緒を漂わせています。神社やお寺での祭事では大きな文字や優美な草木の絵を配した風情豊かな提灯が用いられてきました。提灯の大きな特徴は火袋と呼ばれる本体を小さく折り畳めることです。元来の携帯用の灯具として使われることはほとんどなくなりましたが、今でも社寺の祭事や純和風の家屋などでは提灯にあかりが灯されている姿を見ることができます。
火袋は1本の竹ひごを螺旋状に立体的に組み、その上に和紙を貼って作られます。現在では竹ひごの代わりに金属や樹脂のワイヤーが使われることが増えました。火袋を製作するには木製または金属製の原寸の製作型が必要になります。提灯を製作する上で重要なポイントのひとつが、和紙を貼り終わった後に、火袋の上下の小さな開口部から内側に残った型を取り出せるように予め計算された型を作ることです。まず、製作型を組み上げて立体的なアウトラインを作り、そこにひごを螺旋状に巻きつけます。和紙は正確に裁断され、ひごの上に1枚1枚立体的に貼り込まれてゆきます。経験豊かな職人が隣り合う和紙の重なり具合を見極め、余分な和紙を剃刀で丁寧に切り落とします。こうして火袋が完成したら、製作型を火袋の内部で分解し、品物に傷をつけないように慎重に取り出すのです。
Lanternに貼っている和紙は島根県で作られる石州和紙です。この手漉きの和紙は日本で収穫できる上質な楮を甘皮ごと使用し、全て手作業で製作されるとても丈夫な和紙です。提灯の産地のひとつである岐阜県では、先祖供養の仏事であるお盆の時期に使用する盆提灯が多く生産されてきました。伝統的な盆提灯の火袋には多様な形式がありますが、岐阜では最も高貴な形とされる大内提灯が作られています。大内提灯は下から上に向かって緩やかに大きくなる品位のある形をしています。伝統ある古典的な形状を直径1mという大きなスケール感で表現したものがLanternです。石州和紙の大きな火袋から放たれるあかりが、美しく柔らかに空間を包み込みます。