美術館や博物館のコレクションケースのように、蒐集された品々を美しく見せるキャビネットとして2015年に発表した museum cabinet for private collectionは、私たちのものづくりを象徴するプロダクトになりました。
本体を構成するフレームは日本の伝統的な組み方を取り入れ、強度と意匠を大切にしました。フレームの外側面には緩やかな膨らみを持たせ、硬い表情になりがちなキャビネットに柔らかな印象を与えます。さらに、古典的な「玉縁」の装飾によって日本的であり、東洋的な空気を纏います。
日本式の引戸は、レールなどの金属は使わずに、扉枠の上下に溝を掘った昔ながらの方法で取り付け、日本の家具や家屋の建具を意識しました。
小さな建築物を造るように、日本の木工技術のみでこのキャビネットを作りました。木造建築の軸組を連想させるフレームの構成や建築物を支える木組みのような脚部は、日本の洗練された建築をイメージしています。
そして、美しい建築物が大開口から光を取り込むように、5 面のガラス面から差し込む自然光は、仕舞われている品々を美しく照らします。窓際に設置すれば、窓の外の緑を借景に収納物を映し出します。光に満 たされたキャビネットは、収納という機能を超え、美しいオブジェのように存在します。