Silent drawer はタイムアンドスタイルの考え方を象徴する収納のための家具です。居住空間の中に効率的かつ機能的に収まり、空間を構成する床、壁、天井の延長線上に存在することを定義としています。存在感を消しながら必然的な存在となる、この相反することが空間の中で長く必要とされる家具の基本的な在り方なのではないかと考えます。家具は様々なスタイルの空間に配置され、そこに暮らす人のパーソナリティに寄り添い変化してゆきます。多様な空間の中でそれぞれの個性と違和感なく融合し空間と一体化すること、そして、家具の持つ静かな存在感が様々な個性を受け入れられることも重要です。装飾性を削ぎ落とし、素材感を大切にしながら安定した機能性を備え、普遍的な存在感を持つことが家具としての大切な要素だと考えています。
Silent drawer は収納に特化してデザインされ、洋服や食器、書類など、様々な用途や目的に対応できるようニュートラルに作られています。シンプルな手掛かりを無垢の前板に彫り込むことで毎日使用してもストレスのない機能的なデザインにしました。また、キッチン収納にも使われる、重量物の荷重にも耐えられるスライドレールを採用しています。キャビネットは日々の生活の中で何度も開閉したり、重量のあるものを長期間保管し続けたりするため、十分な機能性と耐久性が求められます。デザインはSilent cabinetと同様に、無垢材のフレームの表面を円弧状に削り、全体に柔らかな印象を持たせています。日本の古典建築の構成を家具のスケールへ落とし込み、ドロワーをフレームで囲むことで収納部分を建築の居住空間に見立ててデザインしました。