私たちは長年、焼物で家具を作りたいと考えていました。ある時、素朴で、実直なものづくりを続けている石見焼と出会い、stoneware sculpture を完成させることができました。
石見焼とは、瓦や水甕などのように強度のある焼物づくりで名を馳せた島根県の石見地方に続く焼物です。この地方で採れる土は防湿と防塩効果に優れ、瓦や水甕、漬物瓶などに適していました。最盛期には 100 軒を超える窯元で賑わっていましたが、時代の変化と共に化学製品や金属製品の普及によって石州瓦や石見焼は需要が減少し、今ではわずかな窯元だけで製作が行われています。
stoneware sculpture は、70 歳を超える1 人の職人が土づくりから成形、焼成に至るまで、全ての工程を手作業で製作しています。壺や水甕などの大きな品物を沢山手掛けてきた窯元で、大きな壺になると高さ 2 メートル、直径 1 メートルを越え、大物づくりには定評があります。石見焼特有の「しの作り」もしくは「玉づくり」と呼ばれる技法で、紐状に伸ばした粘土を、円を描きながら積み上げ、その積み上げた粘土を、轆轤を回しながら全身を使って成形してゆきます。かなりの腕力を要し、迷うことなく、一気に形を作り上げる熟練の技が求められます。
製品化までの過程で、職人と私たちは図面を介さず、簡単なスケッチだけを基に、轆轤を目の前にしながらその場で形を決めていきました。頭の中のイメージを共に具現化する作業は、言葉以上に感覚を大切にした対話がありました。そして、製品開発から今に至るまで、変わらない情熱と強い好奇心を持って 1 点ずつ作られているからこそ、発表以来、日本のみならず世界からも高い支持を得ているのかもしれません。1人の職人との出会いによって、彫刻のように唯一無二の表情と存在感を持ちながら、プロダクトとしての生産体制を両立させている稀有な製品であり、私たちにとって幸せなものづくりの一つです。