The sensitive light chair は繊細さと簡潔さ、静かで清楚な存在感を持つ椅子を目指して製作しました。何よりも軽量で強度と耐久性を兼ね備えた椅子であること。誰でも片手で持ち上げることができ、空間や生活の中で決して出しゃばることなく品格を保ちながらひっそりと佇む姿を思い描き、全ての部材を極限まで細く削り込むことにしました。
全体の強度を確保するため、日本の古典建築の木組みやヨーロッパのウィンザーチェアの構造を取り入れています。細い部材で構成された椅子を神社や寺院の建築物に見立て、繊細で美しい清楚な佇まいを大切にして形にしました。貫を脚に直接突き刺す構造にして、4 本の細い脚にバランス良く力を分散させています。座裏は、座面を構成する座枠と4 本の脚の部材を一体に繋いで組む複雑な仕口を採用して強度を高めました。裏面まで細部に渡り美しく仕上げることで、どこから見てもどこに触れても、美しく上質さを感じられる椅子を目指しました。
日本の住まいに椅子が定着したのは今から50 年くらい前のごく最近のことです。一方で世界各地にはヨーロッパを中心に椅子の長い歴史と文化があり、数多くの美しい個性的な椅子が存在しています。これまで世界中で多くの椅子がデザインされてきた中で、日本人が作るこれからの椅子の在り方を自らに問うことは重要なテーマだと考えています。The sensitive light chair は、日本の美意識と古典建築に着想を得た構造が、椅子という小さなスケールで具現化したものであると感じています。