Lighting

Drop Paper Lamp

K5は、ストックホルムを拠点に活動するクラーソン・コイヴィスト・ルーネがインテリアデザインを手掛けたホテルです。東京の歴史的建造物をリノベーションした施設は、ホテルとレストランのほか、ワインバーやコーヒーショップなどが集まる独創的な空間です。

K5のためにデザインされた、この空間のアイコンとも言える照明を、各種サイズを取り揃えて製品化しました。その中でも、直径120センチという大きなサイズは、職人たちにとっても挑戦であり、試作を重ねて完成しました。

Drop paper lampは、堅牢で質実剛健な提灯づくりで知られる茨城の水府提灯の技術を生かしました。骨組みとなるひごには紙を巻いたPET樹脂を採用し、繊細なしずくの形を作り出しています。シェードには約1500年の歴史をもつ越前和紙を選定しました。繊維が太くて長い楮を原料としているので、丈夫であり、温かみのある色合いが特徴です。越前和紙は大判を得意とし、襖や屏風のような大きな建具に継ぎ目なく貼ることができます。

Nagoya


行燈とは1600年頃(江戸時代)から日本人の生活の中で多く使われていた灯具で、日本の伝統的な灯りの一つです。木のフレームに和紙を張り、蝋燭や油を原料とした行燈は、和紙を通して詩的な陰翳を生みます。また、部屋から部屋へ持ち運ぶことができるのも特徴です。 

現代では、夜も明るく照らされている日本ですが、その昔は1日の時間の移り変わりに身を任せ、昼は日の光を室内に取り込み、夜は手元を照らすだけの静かな灯りと共に暮らしていました。そんな日本人の美意識や自然観を現した照明である行燈を現代の生活に取り入れることを目指したのがNagoyaです。 

 

Nagoyaは、多くの歴史書や古道具の資料から精選した、江戸時代中期以降に用いられた角行燈の一種である「名古屋行燈」を手本にしました。骨格となるフレームの素材に選んだ秋田杉は、日本の寒冷地である東北地方の厳しい環境の中、時間を掛けてじっくりと成長するからこそ年輪の密度が高く、繊細な木目を持っています。真っ直ぐに伸びる秋田杉は、割れや反り伸縮などの変化が少なく、加工性が高いこともあり、行燈づくりには適した材です。 

また、Nagoyaには、樹齢100年を越えた、上質な秋田杉を使用しています。1台を製作するための木材は可能な限り共木を使用することで木目や色の統一感を生み、美しい佇まいになります。木工照明を専門とする指物師が、金物を一切使わず、精巧な仕口や継ぎ手の加工のみによってフレームを組み上げ、和紙を張り、一つひとつ丁寧に製作しています。 

希少で美しい秋田杉と美濃の手漉き和紙で作られたNagoyaは、日本の伝統的な照明の中で最上級の組み合わせと言えます。現代の効率優先のものづくりとは逆行した手間と時間を掛けたものづくりだからこそ、大量に生産されるものとは比べられない価値を生み出しています。

Nagoya

Light
W24×D24×H47
Cedar
Japanese paper
BDTL-401

Bombori

日本の伝統的なあかりはその特有の文化や歴史、生活習慣を表現しており、人々の精神性と結びついた日本の生活文化の貴重な資産と言えます。灯火器は地位の高い人だけが使用する道具でしたが、江戸時代になると広く庶民の間にも浸透してゆきました。電気が普及する以前に日本で使われてきた灯火器のひとつが行燈です。行燈は、屋外に持ち出しても風で火が消えることがないよう、木や金属で作られた枠に和紙を貼り込んだ火袋と呼ばれる囲いを取り付けた灯火器です。京都では丸く柔らかい形のものが多く、江戸では四角い形のものや光量を調整できる有明行燈、名古屋では木台の上に鉄の四角い火袋を乗せた名古屋行燈など、時代や地域により、様々な形の行燈が作られました。現代では一般家庭で見かけることはほとんどなくなり、旅館や料亭といった純和風の室内で白熱球やLEDを光源とした行燈が使われています。日本旅館の土間には露地行燈が置かれ、仄かな赤色を帯びた柔らかなあかりが客人を迎え入れてくれます。また、枕元に置かれた行燈や天井から下がる丸い雪洞形のペンダント照明が、室内に情緒的な雰囲気を演出しています。

日本の指物師の歴史は平安時代の貴族文化に起源を持ちます。京指物や奈良時代に遣唐使によって伝えられた唐木指物は安土桃山時代に茶の湯文化や書院造の隆盛とともに発展し、長崎や大阪へと広がってゆきました。江戸では徳川幕府が全国の職人を呼び寄せて江戸指物が興されました。指物師は家具や建具、階段、家庭内で使用する道具類などの細かな木工加工を担う職人です。木材と木材を接合するための仕口を加工して美しく強度の高い品物を作る仕事であり、こうした指物師や建具師たちの繊細な技術なくして日本の木工文化の躍進はありませんでした。

Bombori は秋田杉の無垢材の木枠に美濃の手漉き和紙を貼り込んでおり、電気部品以外は全て往時と同等の本質的な素材が使用されています。伝統的な照明の正統な佇まいを備えながら、モダンな空間の中にも違和感なく存在することができるように無駄な装飾を省き、素材が持つ存在感を大切にしました。機械生産では決して成しえない、手仕事の繊細さと作り手の情熱が凝縮した照明です。

Bombori

Pendant light
φ78×H65
Cedar
Japanese paper
BDTL-101

Bombori

Pendant light
φ58×H47
Cedar
Japanese paper
BDTL-111

Bombori

Floor light
φ40×H53
Cedar
Japanese paper
Steel – Black
BDTL-113

Bombori

Floor light
φ58×H90
Cedar
Japanese paper
Steel – Black
BDTL-112

Bombori

Floor light
φ78×H85
Cedar
Japanese paper
Steel – Black
BDTL-102

Lantern


夜、日本の古い街並みを歩いてみると、店の軒下には提灯の暖かなあかりが灯り、辺りに古き良き日本の情緒を漂わせています。神社やお寺での祭事では大きな文字や優美な草木の絵を配した風情豊かな提灯が用いられてきました。提灯の大きな特徴は火袋と呼ばれる本体を小さく折り畳めることです。元来の携帯用の灯具として使われることはほとんどなくなりましたが、今でも社寺の祭事や純和風の家屋などでは提灯にあかりが灯されている姿を見ることができます。

火袋は1本の竹ひごを螺旋状に立体的に組み、その上に和紙を貼って作られます。現在では竹ひごの代わりに金属や樹脂のワイヤーが使われることが増えました。火袋を製作するには木製または金属製の原寸の製作型が必要になります。提灯を製作する上で重要なポイントのひとつが、和紙を貼り終わった後に、火袋の上下の小さな開口部から内側に残った型を取り出せるように予め計算された型を作ることです。まず、製作型を組み上げて立体的なアウトラインを作り、そこにひごを螺旋状に巻きつけます。和紙は正確に裁断され、ひごの上に1枚1枚立体的に貼り込まれてゆきます。経験豊かな職人が隣り合う和紙の重なり具合を見極め、余分な和紙を剃刀で丁寧に切り落とします。こうして火袋が完成したら、製作型を火袋の内部で分解し、品物に傷をつけないように慎重に取り出すのです。

Lanternに貼っている和紙は島根県で作られる石州和紙です。この手漉きの和紙は日本で収穫できる上質な楮を甘皮ごと使用し、全て手作業で製作されるとても丈夫な和紙です。提灯の産地のひとつである岐阜県では、先祖供養の仏事であるお盆の時期に使用する盆提灯が多く生産されてきました。伝統的な盆提灯の火袋には多様な形式がありますが、岐阜では最も高貴な形とされる大内提灯が作られています。大内提灯は下から上に向かって緩やかに大きくなる品位のある形をしています。伝統ある古典的な形状を直径1mという大きなスケール感で表現したものがLanternです。石州和紙の大きな火袋から放たれるあかりが、美しく柔らかに空間を包み込みます。

Lantern

Pendant light
φ100×H85
Japanese paper
BDTL-301

Lantern

Floor light
φ100×H115
Japanese paper
Steel – Black
BDTL-302